ある日の昼下がり。

「なあ、志貴」

「ん??どうした士郎??」

『裏七夜』の仕事も無く、久しぶりに完全休養となった七夜志貴はどう言う訳か盟友衛宮士郎の家にだべっていた。

ちなみに士郎の家に入り浸っている居候の面々もこの日は全員外出していた。

つまり今現在衛宮家にいるのは志貴と士郎の二人だけである。

「いや、どうしたって・・・お前今日は完全に休養なんだろ?」

「ああ」

「何でうちに来ているんだ?どうせならアルクェイドさん達と出かけたり家族サービスしようとは思わんのか?」

「家族サービスなら明日行う」

「明日??」

「ああ、今日明日とまったく仕事が無いんだ。だから今日はそれぞれの自由時間に充てて明日は皆の為に使う」

そう説明する志貴に士郎はなるほどと頷く。

「なるほど・・・結構皆の事考えているんだな」

「ああ、それに独身の頃と比べるとだいぶ落ち着いているから。あの当時は夜討ち朝駆け当たり前だったからな。今じゃあ皆そんな目くじら立てて俺の独占に固執しなくても良くなった」

「壮絶だったんだな・・・」

「ああ、特に高校生時代は夜おちおち寝てもいられなかった。起きたら隣に誰かがいたなんて(それも下着姿だったり一時全裸だった事も)ざらだったし」

「で今は?」

「少なくともゆっくり寝ている」

「なるほどな、そういった意味じゃあ多妻と言うのも悪くないか?」

「最もそれは全員平等に愛してやらないと」

「やっぱりか?」

「ああ。誰かをえこひいきすれば、必ずそこから亀裂が生じて最終的には決壊する。全員平等に愛せなけりゃ誰か一人に絞る事をお勧めするぞ。全員を妻にするって事は裏返せば全員を幸福にしなくちゃいけない義務と責任を背負ったって事なんだからな」

「でもお前の場合、義務とか云々の前に当然の様にアルクェイドさん皆の幸福にする気なんだろ?」

「ああもちろん」

「そうだろうな。やっぱりお前はそういった自然体が良く似合うって」

「そういうお前はどうなんだ?士郎、結構人気あるようだが」

「お前と同じく普通じゃない人ばっかりだけどな・・・俺は・・・どうかな・・・案外誰か一人に絞るかもな」

「まあ自分で納得のいく答えを出すんだな」

「ああ」

そう頷きながら二人は緑茶を啜る。

「そういえば士郎」

「ん??」

「先日出たよな『Fate hollow ataraxia』」

「ああ出たな」

何故違う歴史の事・・・と言うよりも現実世界の話しているのか?

それを考えてはいけない。

ここより先は暫し二人の会話だけで話を進めるとしよう。










「いろいろ新キャラも出たな」

「ああ、設定だけのキャラクターにも肉付けされたし」

「それでな、少し疑問に思ったんだが」

「何だよ急に」

「いやなに・・・これはもう関係ない人間の言葉だから言える言葉なんだが・・・仮に第二回人気投票が起こった場合・・・」

「順位予想か?止めとけ止めとけ。そんな何時やるかわからんのを予想したって無駄だって。それに外れでもしたら赤っ恥だぞ」

「そうじゃないって・・・まあ近いものもあるがな」

「じゃあ何なんだ?志貴」

「もしそうなったとして、順位が上がるか下がるかを予想しないか?」

「上がるか下がるか・・・それなら面白そうだな」

「ああ、具体的な順位でなく第一回と比べて上がるか下がるかを考えていくんだ」

「でも・・・よく考えてみれば間違いなく人数は増えるだろ。それで比べられるか?」

「それでも良いさ前回に比べたらって事だし」

「うーん・・・よし乗った。少なくとも退屈しのぎにはなるだろうな。少し長くなりそうだからポットと茶持ってくる」

「ああ、それと饅頭も」

「オッケー」









「さて準備も整ったから始めるか、志貴」

「ああ、とりあえず最初はオーソドックスにメインの女性陣から始めるか」

「ああ、まずはアルトリアからか・・・」

「彼女は微妙だな・・・と言うか前回一位だったからな・・・現状維持か下降するかしかない訳だけど」

「今回は・・・やはり食い物ネタが多かったな」

「ああ、最初彼女は決め細やかな食事が好きだったんだろ?」

「そうだったな。少なくとも初期設定では大食いと言うより美食家の色合いが強かったな」

「それがいつの間にか・・・完全に大食らいキャラになりつつある」

「その上体型が変わらないとは・・・ある意味では女性の敵だな」

「ああ・・・でも大食らいキャラのアルトリアさんも良いというファンも多いだろうから・・・現状維持が濃厚かな?」

「そうだな。で次は・・・遠坂さんか・・・」

「ああ・・・凛は・・・」

「こっちはこっちでアルトリアさん以上に微妙だな。第三者の目から見ても出番少なげだったし」

「まあそれでも凛の奴、本編では全ルート出演の上おいしい所持っていきまくったから、それで釣り合い取れているんじゃないのか?」

「ああ、かも知れないな。だけどな・・・」

「何か気になることでも??」

「いや、今回の彼女見てな。ふと思ったんだよ」

「何を?」

「遠坂さん秋葉と同じ運命辿っているような気がしてな」

「「・・・・・・」」

「一つ提案だが志貴」

「なんだ士郎」

「とりあえず・・・忘れるか」

「同感。こちらも現状維持が可能性大だな」

「下から猛烈な突き上げ食らわなければ・・・」

「そういえば志貴」

「ん??どうした??」

「一つ聞きたいんだが・・・あの杖の声って・・・その・・・まさかとは思うんだが」

「忘れろ。何処に耳があるかわからん」

「そ、そうだな・・・」

「一つ言えるのは・・・琥珀なら可能だって事だ」

「は、はははははは・・・それで次は桜か」

「彼女は今回はっちゃけていたな。それも良い意味で」

「ああそれに弓道部の主将になって自立心が出たし意外な一面も見せたから・・・桜は上がると見て良いんじゃないか?」

「ああ、ただ本編の腹黒シーンが激減したからな・・・それがどう影響するかで桜さんは決まるな」

「ああ、じゃあ桜は今の所は現状維持の方が濃厚かな?」

「そこに行き着くかな?ところで士郎」

「ん??」

「桜さんって太っているのか?」

「じゃあ次はイリヤか・・・」

「おい待て。綺麗にスルーしたな」

「こう言った事は無視してあげる事が一番良いんだよ。少しは察しろ」

「ああ判った・・・」

「じゃあ話を戻してイリヤだが」

「色々振り回されたな。お前は」

「まあ本編の様にやるかやられるかみたいな展開が無いだけマシだけど」

「ははは、それはそれで大変だな。ただ今回は・・・どちらかと言えば出演者と言うより観客の色合い強くなかったか?」

「そうだな。最後に真相とか教えるあたりも・・・進行役とも呼んでも良いだろうし」

「彼女は現状維持って所かな?」

「それか下がる可能性が少し強いかも」

「じゃあそれで行こうか」

「次はライダー・・・メドゥーサだが・・・」

「彼女は上がるだろう。最悪でも現状維持」

「俺も賛成」

「あれだけ補完と言えるイベントやらエピソードが増えるとは予想外だったし」

「ああ、それに悲惨な過去もわかったし」

「彼女が自身に相当なコンプレックス持っているのも当然か・・・」

「じゃあ次はメディアだけど」

「彼女も上がる可能性が高いな。少なくても下がる可能性は少ないだろう」

「ああ、本編ではあれだけの悪女っぷりが・・・一変して旦那さん一途の奥様キャラに早変わりしたな」

「それに隠していた素顔をこれでもかって位曝け出して・・・」

「ここがどう影響するか・・・」

「さて、出していけばきりが無いから、女性のメインキャラはここまでにして」

「おい少し待て。藤ねえは?」

「藤村さんは・・・言うべき事あるか?」

「無いな。相変わらずだし藤ねえは」

「むしろ悪化しているだろ」

「そうだな・・・完全にギャグキャラと化している」

「藤村さんは・・・下がるか・・・奇跡的な確立で現状維持」

「奇跡的ってどれ位の可能性で」

「・・・じゃあ次は新キャラに行くか」

「おいこら、スルーか」

「俺はまだ死ぬ気は無いぞ。サーヴァントにすら打撃与える音波攻撃出す人と戦えるか」

「まあそうだな・・・でも志貴、新キャラじゃあ比べる事は・・・」

「いや、何人かは第一回にも出ていたからなそれなら比べられるだろう?」

「だが・・・上がるか下がるか言うよりは全員間違いなく上がるだろう。それも『上昇』と言うよりも『跳躍』」

「そうだな・・・特にバゼットさんは・・・」

「下手すればトップ10にも食い込むぞ。バゼットは」

「それと・・・後、新キャラだとカレンだが・・・」

「彼女もまた微妙だな・・・」

「と言うか、何処まで行くのか、何処に落ち着くのか俺たちにも予測がつかん」

「第一印象の強さにしては出番少なげだったしな・・・」

「あの女版言峰綺礼のような質の悪過ぎる性格がどれ位受け入れられるのかが分かれ目だろうなきっと」

「じゃあ次はサブキャラか志貴?」

「いや、サブまで行くと予測が付けられ難い。サブキャラの方や今回出て来なかった人には申し訳ないが、ここまでにして次はメインの男性陣に行く」

「そっか・・・まあいいか。じゃあ最初は・・・金ぴかか」

「いきなり微妙な所を・・・だが、あれは下がるだろう」

「同感、むしろ子供英雄王の方がのし上がってくる可能性が高い」

「永遠の謎だな。あんな素直な少年がどうしてあそこまで捻くれてしまったのか・・・」

「全くだ。本当にあの子は素直で良い子だったのに・・・」

「士郎、申し訳ないが、感傷に咽ぶな。次にバーサーカーは・・・」

「申し訳ないが現状維持じゃないか?酷な言い方かもしれないけど。上がる要素も無いが下がる要素もない」

「なるほど・・・きつい言い方だが確かに見せ場は本当に一回だけだったしな・・・下がるとも言い難いし、上がるとはもっと言い難いだろうな」

「後は文字通り門番だったし」

「で次は・・・アサシンは・・・」

「こいつはこいつでやっぱり微妙だな。バーサーカーについで出番少なかったし」

「やはり現状維持か、新キャラの趨勢によっては下がるか」

「そんな所か。で次の葛木先生は」

「上がる可能性大きい」

「確かに。男性キャラの中では補完された量はトップクラスだしな。で志貴」

「ん??」

「あの人やはり・・・育てられたのって」

「違うんじゃないか?・・・俺も微妙としか言えないけど。ただ、うちはあんなもったいない極まる!!みたいな使用法はしないって言うのは間違いないけど」

「なるほど・・・そうだな。もともと、お前達は使い捨てされていたのを何度も生還する為に暗殺技法を磨いてきたんだしな。じゃあ次、ランサーは上がるかな?」

「ああ、俺もそう思う・・・と言いたいが」

「違うのか?」

「やはり上が上だからな・・・良くて現状維持じゃないか?」

「ああ、強敵ぞろいだからな・・・現状維持なら健闘といっても良いだろうな」

「そう言う事。で、最後は・・・」

「へ?まだ二人いるぞ」

「まあ同一人物だから揃って予測と言うことで」

「ちっ・・・仕方ねえか・・・」

「でまずアーチャーは」

「あいつは下がる。間違いなく下がる。つーかむしろ今までの予測全部外れても良いから下がってくれ」

「は、はははは・・・相当根に持っているな」

「大体気に食わなかったんだ。あの野郎が三位だなんて」

「・・・自分の順位には文句は無いんだな・・・」

「あれはあれで妥当だと思うし。文句あるのはあいつの順位だけ」

「で、士郎お前は?」

「俺個人としては上がってほしいと言うのが本音だが。第三者から見れば下がるだろうな。きっと」

「そこは他のキャラの突き上げでって事か」

「そう言う事」









ひとしきり話が終わるとぬるくなった緑茶を二人は無言で啜りだす。

「ふう・・・」

「こういった話をするのも良いもんだな」

「ああ、今日は完全にフリーだし。仕事とかまったく関係ない話してだべるのも良いもんだよな」

「ああ。で志貴今日晩飯は?どうするんだ?」

「ああ、皆夕方までには帰ってくるからその時に決めようかと・・・」

「それならうちで食おうぜ。ちょうど食材を使い切ろうと思っていたんだ。だからここは豪勢になおかつ大人数で」

「よし、それならゴチになる。じゃあ俺の方からも材料提供するよ」

「助かる。うちの場合余る事なんて無いからな」

「ああ、じゃあまた後で皆と一緒に持ってくる」

こうして一日は過ぎていく。

これはゆがんだ歴史には何の関係の無い・・・だが確かに繋がる日々の他愛の無い話。

墓堀人の下へ還る。